19番目のカルテ 徳重晃の問診【2】(ゼノンコミックス)
富士屋カツヒト 、 川下剛史
なんでも治せるお医者さんを目指して奮闘する医師の物語の第二巻です。
整形外科の専門医だった3年目の滝野先生が、「なんでも治せるお医者さん」を目指して、徳重先生と共に総合診療科で日々の診療にあたります。
病院に来る人々は「疾患」と「病い」を抱えているという言葉が印象的でした。
・「疾患」は医学的に説明できる客観的な症状や体の状態
・「病い」はその疾患を通して受ける不便さや感情の変化、患者が受ける様々な影響のこと
病気になった時、人は色んなことを考えるし、生活や人間関係も変わらざるを得ないかもしれない。
だから、病気だけではなく、家族を含めて患者がどんな影響を受けるのかを考える必要がある。
ただ疾患を診ればよいのではなく、その疾患が患者さんにどう影響しているのかを見定めて解決策を探っていくところが、総合診療医の腕の見せ所なのだと思いました。
また、第二巻では、総合診療医の徳重先生の師匠でヒゲパン先生こと、赤池先生が登場します。
赤池先生は、医師として技術や知識ではない、大事なことに気付かせてくれます。
ある日、徳重先生は自分が主治医をしていた亡くなった患者さんの日記を見て、実は患者さんが病気への不安や、排泄介助の申し訳なさ、痛みに苦しんで耐えていたことを知ります。
なぜ自分に言ってくれなかったのか、自分に何ができたかを悩み、考える徳重先生に、赤池先生はこんな話をします。
あらゆる知識を覚えても、どんな技術を身に付けたとしても、望まれなければ俺たちは何もできないんだ。
俺たちが見ているのは「人間」だから。
例えば医学書を全部覚えてどんな手術でもできる奴になったとして、それだけじゃ機械みたいなもんだ、本当に役に立てるかね。
俺はそうはなりたくない。
俺はどこまでいっても、ちょっと色々知っているおせっかいな隣のおじさんでいたいね。
お前が周りからどう思われたいかは知らないよ。
けどな、俺もお前も人間だ、できないことはあるよ。
だったら人間として使える武器はなんだって使ってけばいい。
まずは顔、そんな顔した奴に本音なんて話せないだろ。
誰が相手でも否定せず、じっと話を聞き、寄り添い優しく包む。
この広い海のような、なんでも受け止める医者になれよ、徳重。
このやりとりにじーんときました。
自分にできることは少ないですが、少なくとも相手を否定せずじっと話を聞くことはできます。
私も日々の臨床で、こんな姿勢を忘れずにいたいと思います。
19番目のカルテ 徳重晃の問診 2巻 (ゼノンコミックス)