精神科養生のコツ(岩崎学術出版社)
神田橋條治 著
養生の頼りになるのは、「気持ちがいい」という心身の感覚です。
「気持ちがいい」という感覚をいかに育てていくか、自分の内側へ意識を向けていくかのヒントを丁寧に描いた良書でした。
著者がまえがきでも触れていますが、精神科治療の現場では確かなことが少なく、すべての患者に対して「こうしたらいいですよ」ということができないため、一人ひとり手探りでその人に合う治療や養生方法を探していく必要があります。
しかし、感覚には個人差があり、他の人が気持ちいいと思うことでも、自分にとっては気持ちよくないと感じることも少なくありません。だからこそ、人任せにせず、自分の感覚を養うことによって原始生命体の機能を呼び戻して養生につなげていこうとする考えには共感できました。
体のどこかが悪くなるとたいてい痛みを感じるため、痛みの増減によって病気の良し悪しを知ることができますが、脳に関しては痛みがありません。そのため、働きが悪くなったことを知るしかないのですが、それを知るのは脳の働きによるものであるため、気がつきにくいです。
「気分がいい」、「ハッキリ見える」、「頭がさわやか」、「脳が涼しい」など、自分自身で脳の働きがよくなったことを知る必要があるという説明は分かりやすかったです。
指テストで自分にいいものを判別したり、簡単にできる整体などが紹介されていたのもよかったと思います。
精神科養生のコツ