「時代が締め出すこころ」という書籍からの紹介です。
時代が締め出すこころ(日本評論社)
青木省三
本書は、精神科の医師として、また一人の人間として、青木先生の温かい気持ちや、患者さんに立ち直ってほしいという願いが込められた一冊です。
最後の自著三編を振り返る記載において、青木先生は
「当初は青年を『治す』治療を考えていたが、次第に青年が自身を『治す』のを援助する、あるいは青年が自然に『治る』のを援助するのが私の仕事ではないか」
と語っています。
また同時に、
「悩みや苦しみがない状態が治療や援助の目標」
ではなく、
「悩みや苦しみをしっかりと感じながら、それも人生の一部として受けとめて生きていくことが一つの目標である」
と考えるようになったとも述べており、患者さんの自立を応援する姿勢が伺えます。
私も鍼灸マッサージの治療をするにあたり、似たような考え方を持っています。
「患者さんの痛みや不自由がなくなること」
が治療の目標ではなく、
「多少の痛みや不自由があっても、痛みや不自由さをある程度は受け入れながら、できることやできるようにするための工夫を一緒に考えて、よりよい生活を送れるようにすることが目標」
という考え方です。
痛みや疲労、不自由さは固定的なものではなく、仕事や介護、生活のストレスなどで変化する流動的なものです。
そのため、痛みや不自由さがない状態を求めるのではなく、患者さんがそれを受け入れながら、なんとかやりくりできることの方が大切なのではと考えています。
そのための治療や援助ができるように、日々精進したいと思います。
時代が締め出すこころ (精神科外来シリーズ)