無病息災と一病息災

「無病息災」という四字熟語があります。

これは、

「病気を(全く)せず元気であること」

という意味です。

一方、「一病息災」という四字熟語もあります。

これは、

「一つくらい病気があった方が、かえって体に気を付けるので健康でいられる、長生きできる」

という意味です。

引用サイト:平成26年版 厚生労働白書
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/14/dl/1-04.pdf

 

 


私が訪問施術に伺っている患者さんは80代~90代の方が多いですが、比較的元気で長生きしていらっしゃる方々は「一病息災」の人が多いと感じています。

・小さい頃は喘息がひどくて学校を休んで入院していた

・子供の頃、腸チフスにかかって高熱が出て死にかけた

・肝臓が悪くて運動が苦手だった

といった方々が90代までお元気に過ごしていらっしゃるのです。

一方で病気一つしたことがなくて90代でも元気な方もいらっしゃるので、もちろん個人の体質や生活習慣、環境などの要素も大きく影響していると思います。

 

 

ただ、私が鍼灸マッサージの臨床をしていて感じるのは、病気の経験がある患者さんの方が、体との付き合い方が上手だということです。

例えば、痛みや不快感、体のだるさや頭痛などがあった場合、病気の経験がある方は「今日はちょっと安静にしよう」とか「お酒を飲まないで早めに寝よう」といったように、無理しないで過ごすことが多いです。

一方、病気の経験がない方は、「これくらい大丈夫」、「今日は接待があるからお酒を飲まなくちゃ」といったように、大したことがないと過信して、無理を重ねてしまいます。

また、痛みの経験があってうまく付き合っていく必要があることを知っている人は、多少の痛みがあっても、「今日の体調は70点くらいかな」、「以前は20点くらいの日が多くてつらかったけど、最近は50点くらいの日が増えてきた」といったように、毎日が100点ではないことを知っています。

ところが、痛みの経験がないと、毎日100点なのが当たり前だから、ちょっと痛いだけで慌ててしまって、不安になって精神的にも影響を受けやすくなってしまいます。

 

 

病気や不調があったときには、もちろんその時はつらいですが、その経験をしているからこそ、うまく体と付き合って長く緩やかに過ごしていけるのかなと思います。

私自身、20代の頃は毎日の頭痛に悩んでいました。

今でも忙しかった翌日の朝にたまに頭痛がありますが、「まあこんなもんかな」と考えたり、「今日は夜更かしせず早めに寝よう」と自分の体を労わりながら過ごしています。

病気にならないこと、不調が全くないことを目指すのでなく、病気や不調と上手に付き合っていきたいものです。

高齢者の入浴券について

先日、豊島区からいらしている70代の患者さん(以下Aさん)と話した銭湯の話を紹介します。

当院は、北区西ヶ原にありますが、豊島区との区境になっていて、豊島区の患者さんも多くいらっしゃいます。(当院の向かいのマンションの住所は豊島区西巣鴨です)

Aさんは最近よく銭湯に行っているそうです。

「銭湯も値上げして結構高いのよね~」

とおっしゃっていたので、

『北区のご年配の患者さんは区から銭湯のチケットがもらえて100円で入れると言ってましたよ』

とお伝えしました。

 

 

北区では、北区内に住所を有する70歳以上の方は年間で入浴補助券を24枚もらえて、1回あたり100円で利用できるサービスがあります。

 

引用サイト:北区 令和7年度高齢者ヘルシー入浴補助券
https://www.city.kita.lg.jp/socialcare-health/elderly/1008607/1008617.html

 

そこで、豊島区ではどうか調べてみたところ、豊島区でも同じようなサービスがありました。

豊島区では、豊島区に住民登録のある65歳以上の方で、「としま・おたっしゃカード」を発行すると年に40回まで100円で利用できるようです。

 

引用サイト:豊島区 敬老入浴事業(としま・おたっしゃカードのご案内)
https://www.city.toshima.lg.jp/379/kenko/koresha/ikigai/000679.html

 

この情報をAさんにも伝えたところ、早速確認してみるとおっしゃっていました。

 

 

ちなみに、近隣の板橋区でも同じようなサービスがあります。
(当院には板橋区からいらしている方も結構いるのでリンクを付けました)

 

参考サイト:板橋区 令和7年度板橋区敬老入浴事業のご案内
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kenko/kourei/kenkou/1055676.html

 

こういった区のサービスは、案外知られていないこともあるので、「〇〇区 サービス名(銭湯、映画、体操など)」で検索したり、区役所に用事があるときには聞いてみるとよいかもしれません。

私が知っている情報が、Aさんのお役に立ててよかった出来事でした。

 

 

回数をやればよいという筋トレ思考

今回は患者さんにお伝えするセルフケアについて書きます。

当院にいらした患者さんに、ストレッチ方法や体の動かし方のセルフケアをお伝えした際、

「これは何回やればよいですか?」

と聞かれることがあります。

 

 

私がお伝えするセルフケアは回数はそれほど重要ではなくて、体に意識を向けながらゆっくり動かしていくものが多いのです。

そのため、回数はそんなに重視していなくて

「2、3回で十分なので、しっかり意識しながらゆっくりと丁寧に動かして下さい」

とお伝えしています。

ところが、その意図が正しく伝わっていないせいか、とにかく回数をやればよくなると思っている方がいらっしゃいます。

これが筋肉を付けることが目的の筋トレであれば、「50回やって下さい」ということでよいのかもしれません。

 

 

しかし、「体の緊張している筋肉をゆっくり刺激する」、「動きが悪くなって固まっている関節を少しずつ動かしていく」、といったセルフケアの場合には、筋肉や関節に意識を向けて、できるだけゆっくり、もし痛みが出たらやり過ぎなのでその一歩手前まで、といったことを意識する必要があるのです。

とにかく回数をやればよい、という筋トレ思考ではかえって症状が悪化してしまう可能性があります。

回数という分かりやすい目標があれば、それを達成するだけでよいと単純に考えてしまいがちです。

ただ回数をこなすのではなく、いかに自分の体と対話していくか、体の状態を意識しながらやっていくかをきちんと伝えていきたいと思います。

 

痛いとき”さすさす”する

先日、首から背中の痛みで来院された患者さん(以下Aさん)から聴いた言葉が印象に残ったので紹介します。

朝起きたら、首が痛くて動かせなかったAさん。

痛みが徐々に背中にも広がってきて、動くのも大変だったそうです。

 

 

痛めたその日に当院に来院して施術したところ、動かせる範囲が少し広がって痛みも減少しました。

そこから数日後、まだ半分くらい痛みが残っていることで再来院されました。

その際に、

「前回のあともまだ痛かったので、自分で”さすさす”していたら、少し良くなりました」

とおっしゃっていました。

 

この”さすさす”という言葉、皆さんは分かりますか?


私はすぐに、「さする」という言葉だなと分かりました。

ちなみに、手のひらや指を使って皮膚を軽くさすることをマッサージの専門用語では「軽擦」(けいさつ)と言って、これも立派な手技なのです。

 

 

そこで、Aさんに

『”さすさす”という言葉、かわいい言い方ですね』

と伝えました。すると、Aさんは

「いつも子どもが使っている言葉で、自然と出ちゃいました。子どもがかゆかったり、痛かったりするとき、”さすさす”してと言うので、家では普通に使っています」

とのこと。

どこか痛い時に、その場所をさすってあげるのはよくあることで、「痛いの痛いの飛んでいけー」と言いながらやったりしますよね。

 

 

実はこれ、「痛みの抑制系」と言われていて、触覚刺激により痛みの信号を伝わりにくくして、痛みを和らげる働きがあるのです。

 

参考サイト:

東大沢整形外科内科:「痛いの痛いの飛んでいけー」は実は効果的
https://www.higashiohsawa.jp/archives/6685

産経新聞:「痛いの飛んでけー」は本当に効く
https://www.sankei.com/article/20220210-YGO5WIPSDZLQBH4OIOYIODHR2M/

 

子どもの場合には、さらに心理的な安心感も伝わるため、効果が出やすいのだと思います。

患者さんにもこのことを伝えたら、「”さすさす”は本当に効くのですね」と笑っていました。

みなさんもどこか痛い場所があったら、まず”さすさす”して、痛みを和らげましょう。

 

入院による認知機能低下防止の話

今回は私が訪問マッサージの施術をしている90代の患者さん(以下Aさん)から聴いた話を紹介いたします。

Aさんは昨年、自宅で転倒し立てなくなり、救急車で病院に搬送された結果、恥骨にヒビが入っていることが判明し、しばらく入院することになりました。

Aさんの恥骨のヒビは、手術が難しく安静による自然治癒での対応となる旨、医師から説明されたそうです。

 

 

高齢の患者さんが入院や手術をされる場合、一般的に安静を強いられることが多いため足の筋力が低下するとともに、環境が変わることによるストレスで認知機能が低下しやすいと言われています。

参考サイト:

国立長寿医療研究センター 入院すると、もの忘れが進むというのは、本当でしょうか。
https://www.ncgg.go.jp/dementia/prophylaxis/007.html

鳥取県医師会 健康なんでも相談室
https://www.tottori.med.or.jp/nandemo/%E5%85%A5%E9%99%A2%E3%81%8D%E3%81%A3%E3%81%8B%E3%81%91%E3%81%AB%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87%EF%BC%9F


2ヶ月ほど入院し、無事に退院したAさん。

訪問マッサージの施術を再開することになり色々お話を伺っていると、入院前と比べて認知機能の変化はなさそうでした。

そこでAさんに、入院中はリハビリ以外にどんなことをして過ごしていたかを聞いてみました。

Aさんは

「数独をやるのと、ことわざの本を読んでいたのよ。数独は初級から始めて上級までやってたわ」

とおっしゃっていました。(数独とことわざの本は家族が差し入れしてくれたそうです)

 

 

なるほど、数独は安静にしていてもできますし、脳のよい運動にもなります。ことわざの本も、これどんな意味だっけ?と確認しながら読んでいたそうです。私も以前、数独をやっていた時期があります。

参考ブログ:久々に数独をやってみました
https://nishigahara4-harikyu.com/blog/sudoku/

 

Aさんには数独やことわざがよかったみたいですが、他にも詰将棋や音楽を聴く、文字を書く、本を読むなど、安静にしていても楽しみながら脳を刺激することはできそうです。

入院中安静を強いられても、そのときにできることをやっていくことで、認知機能の低下を防ぐことができることをAさんに教えてもらいました。