先日、
「人に触れ、人を支えるあなたへ セラピストのための精神医学入門」
という講座を受講しましたので、今回はその話を紹介いたします。
講師は、精神科専門医・公認心理士・歯科医師の細田大治 先生です。
本講座では、「診断を下すこと」よりも、「よりよい支援につなげること」に重きを置き、日常臨床や支援現場で役立つ精神医学の基本的な理解を共有しながら、うつ病や不安障害、統合失調症など、よく見かける疾患の理解に加え、現場で直面しやすい「困った場面」への具体的対応についても一緒に考えるという内容でした。
うつ病に関しては、昔は心因性、内因性と分けていたのが今は分けなくなっていて、軽度の場合は心理療法で対応、だるくて起きられないなどの中等度以上で薬物療法を行うことが多いという話がありました。
また、薬物以外の治療方法として、修正型電気けいれん療法(m-ECT)、経頭蓋磁気刺激法(r-TMS)という方法もあるそうです。
・修正型電気けいれん療法(m-ECT)
全身麻酔下で通電し脳を電気的に刺激することによって脳内に発作を誘発し、切迫した精神的なあるいは感情的な障害を改善する治療法です。
引用サイト:神奈川県立精神医療センター
https://seishin.kanagawa-pho.jp/specialized-treatment/m-ect.html
・経頭蓋磁気刺激法(r-TMS)
脳に直接アプローチしてシナプスの働きを整える革新的な方法で、脳に繰り返し磁気を利用して電気刺激を与えることで、脳の働きを正常に制御していく治療法です。
引用サイト:東京横浜TMSクリニック
https://www.tokyo-yokohama-tms-cl.jp/about-tms/tms-treatment/
うつ病に関する自殺念慮の話もありました。
自殺につながりやすいのは、抑うつ感、意欲低下よりも「思考制止」だそうです。
これは他の人の発言が頭に入らなかったり、自分の考えを的確に発言できない状態で、もっとも苦痛が強く、外来でも泣いてしまう患者さんが多いようです。
患者さんへの接し方としては、「それはつらかったですね」と受け止めてあげるホールディングという方法や、「○○されたことが嫌だったのですね」とその人の苦痛を言語化するコンテイニングといった方法を使いながら、支持的精神療法をやっていくという話でした。
また、統計として精神科への受診を継続すると1年6ヶ月自殺予防効果がある、というデータがあり、精神科を継続的に受診してもらうことも大切なようです。
睡眠薬の話もありました。
現在の睡眠薬はベンゾジアゼピン系、オレキシン受容体拮抗薬、メラトニンと3つのカテゴリーがあります。
ベンゾジアゼピン系は、もっともクラシックな睡眠薬で、抗不安効果があり安らかな眠気がありますが、依存しやすいタイプの薬です。
オレキシン受容体拮抗薬は近年出てきたもので、理論上は依存がなく、筋弛緩もないため、新規に処方される場合はこれが多いそうです。
ちなみに、「オレキシン」は筑波大学の柳沢正史教授が発見したそうで、10月6日に発表されるノーベル生理学・医学賞の受賞候補者の一人となっています。
メラトニンは、非常に効果が弱いもので、サーカディアンリズム(睡眠・覚醒のサイクル)を整える目的で、ゲーム依存で昼夜逆転している学生などに使用するそうです。
ほかには、SDM(Shared Decision Making)の話がありました。
SDMとは、患者さんと医療者が相談・協力して一緒に意思決定をしていくプロセスで、日本語では「共同意思決定」とも言われ、困難な意思決定と合意形成を同時に行うという特徴があります。
引用サイト:ONCOLOGY 患者さんと医療者がともに決める医療、SDM(Shared Decision Making)
https://p.ono-oncology.jp/support/sdm
日本では長らく医療者、とくに主治医が治療の決定をするパターナリズムというやり方が主流でした。
それが1990年ごろから「医師だけが治療を決めるものではない」という考え方が提唱され、「インフォームドコンセント(IC)」という言葉が出てきました。
インフォームドコンセントは「納得診療」または「説明と同意」と言われ、治療法などについて「患者さんが医師から十分な説明を受けたうえで正しく理解して、医師の説明に納得できる場合に同意をする」というやり方です。
近年では、Shared Decision Makingと言って、患者さんと医療者が協働して治療の意思決定を行う方法があります。SDMでは、治療法は患者さんが決めるのでも医師が決めるのでもなく、患者さんと医療者がコミュニケーションをとることで、患者さんと医師が一緒に治療法を選択する、という考え方です。
私はSDMという言葉を知らなかったので、鍼灸マッサージの治療でもうまく活用したいと思いました。
他に勉強になったのは「人の感情は2週間は持続しない」という話です。
一時的に死にたいと思っても、その気持ちは2週間は持続しないので、まず入院させて何もせずゴロゴロできる状況をつくることが大切だということでした。
ちなみに、うつ病で入院する場合には本を読んだり、ゲームをするのではなく、あえて暇な状況をつくり、休養と回復に専念するのがよいそうです。
色々な話が聴けたので、今後の臨床の経験に活かしていけたらいいなと思います。






西ヶ原四丁目治療院 院長の佐藤弘樹(さとうこうき)と申します。