この銀盤を君と跳ぶ
綾崎 隼 (著)
フィギュアスケートの過酷さと美しさが詰まった渾身の物語でした。
口が悪いが芸術的センスと表現力をもち「氷の獅子」と呼ばれる瑠璃と、自由奔放だが圧倒的な身体能力をもち「雪の妖精」と呼ばれるひばり。
そんな二人を支える、振り付け師で元フィギュア選手の江藤朋香と、ひばりの幼馴染でライバルでもあった滝川泉美、この二人が物語の語り手となっているのですが、自分自身も苦労して苦しみと向き合った二人だからこそ本書の語り手に相応しく、二人の天才とどう付き合っていくのか、非常に読み応えがありました。
表現力やステップ、スピンの技術は経験とともに上達しますが、第二次性徴が終わる前に筋力や体形が変化する女子は最大の得点源であるジャンプの難度が跳ね上がり、そんな身体の変化との戦いが天才が天才のままでいることを許さない競技であるということもよく分かりました。
また、フィギュアスケートは「技術」と「芸術」を両立させるスポーツであるはずが、採点方法が加点方式に変わり、得点を稼げる技への注目が集まり、芸術競技という側面が薄れているという説明も分かりやすかったです。
二人の天才と二人の語り手以外にも、女子フィギュアスケートを支えてきたベテランの加茂瞳や、ひばりの兄で男子フィギュアスケート選手の國雪、新潟市にスケートリンクを誘致して選手を見守ってきた野口達明など、フィギュアスケートを支える人間の活躍も見逃せません。
流血騒ぎがあった「血の四大陸選手権」や観客のブーイングにルールを無視して挑んだ「恥の世界選手権」など、ネーミングやストーリも本当によく考えられていたと思います。
瑠璃とひばり、どちらも順風満帆とはいかず、いくつもの苦悩を乗り越えて辿り着いた、オリンピックの代表を決める全日本選手権の最後の決戦は素晴らしかったです。
フィギュアスケートが好きな人に、ぜひおすすめしたい一冊でした。

この銀盤を君と跳ぶ



西ヶ原四丁目治療院 院長の佐藤弘樹(さとうこうき)と申します。