会社はどうあるべきか。 人はどう生きるべきか 評伝 伊那食品工業 塚越寛

会社はどうあるべきか。 人はどう生きるべきか 評伝 伊那食品工業株式会社 塚越寛
斉藤仁 (著)


塚越さんの年輪経営や幸せな働き方の本は読んだことがありましたが、貧困と病気で闘っていたことは知らなかったですし、どうやって今の会社の礎を築いてきたのか、興味深く読みました。

7歳の時に父を亡くし、母と自分と下の3人兄弟での貧しい生活に加え、高校生のときに結核を発症し3年の隔離生活を送らざるを得なかった逆境があったからこそ、本当の優しさや健康の大切さを誰よりも実感していたのだと思います。

 

 

「誰もが心地よく、働き甲斐があって、笑顔が絶えない会社にしなければ」という熱い想いを秘め、さらに環境が劣悪な会社で働くことになっても「これ以上の底はない。だからこれ以上落ちることもない。あとは上がるだけだ。夢がある。そう思えば力も出る」という逆境に立ち向かう力がすごかったです。

従業員たちに

「自分たちの会社なので、自分たちができることは自分たちでやるのが当たり前だと思った。みんなでやれば楽しい。設備が新しくなって会社がちょっとずつ大きくなっていくのが面白かった」

と言ってもらえるのは、塚越さん自身も率先して大変な仕事を行い、従業員と一緒に汗水流して働き続けたからだと思います。そんな従業員になんとか報いたい、という塚越さんの思いが心から伝わってきました。

 

 

1970年代には寒天の材料である良質な海藻が日本でほとんど買えなくなり苦しい時代を迎えます。

そんな中でも、チリやモロッコ、インドネシア、韓国など、海外に販路を拡大し、相手を信頼して相手の利益も考えてビジネスを行うという決断も素晴らしかったです。

さらに、どの国とも契約書を交わしておらず、信頼関係と誠意で何十年もうまくやっているというのは驚きでした。

また、増収増益を続けていながらも、大手スーパーからの引き合いを見送ったり、無理な増産や増設をせず、目先の利益よりも身の丈にあった安定的な成長を目指した年輪経営も、従業員たちの幸せを思えばのことだと思います。

そんな塚越さんの経営思想が、病気で亡くなった社員や、火事で家を失った社員に対して、全社員で助けるという考えに表れていて家族のような絆で結ばれている、というのは理想的な会社の在り方ではないでしょうか。

 

 

ほかにも印象に残った言葉を以下に要約して抜粋。

・企業経営で目的と手段をはきちがえてはいけない。金儲けは手段であり、目的は人の幸せのため

・寒天ブームは我が社にとって不幸な出来事である。なぜなら、そのブームは他力であって我々の努力ではない。他力で伸びたものは必ず萎む。有頂天になって必要以上の設備投資をしたり気が緩んだりするから、ある意味危険な状況だとも言える

 

 

・掃除は気づきの訓練だ。汚れているところを自分で探す。気づきこそ基本的な人間の能力の向上に繋がる。気づきは接客にも役に立つ。接客の基本は気づきだ。お客様が困っていないか、どんなことを望んでいるか、それを気づいて差し上げればお客様も喜ぶし、あなたたちも嬉しいはずだ。お客様を大切にしようとか、人のためになろうとか、そうした人として大事なことを気づきは育ててくれる

・しあわせってどんな形なんだろうとずっと考えてきた。人それぞれ価値観が違うから絶対的な形なんて存在しない。でも、ある程度物質的に不自由がないこと、もちろん健康であること、夢や楽しみも大事。そうしたことが末広がりに少しずつ広がっていく状態、それがしあわせの形だと思った

 


会社はどうあるべきか。人はどう生きるべきか。――評伝 伊那食品工業株式会社 塚越寛――

【この記事を書いた人】

photo 西ヶ原四丁目治療院 院長の佐藤弘樹(さとうこうき)と申します。
はり師・きゅう師・あんまマッサージ指圧師の国家資格を持ち、病気の治療、予防のお手伝いをしています。

たった一人でも、「治療に来てよかった」と満足していただき、 人生を豊かに過ごすお手伝いをすることを理念としております。
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