無資格者の施術について

先日いらした患者さん(以下Aさん)から

「友人がリラクゼーションの仕事を始めるみたいで、受けに来てと言われたのですが、大丈夫でしょうか?」

という話を伺いました。

その施設では2週間くらい練習?したら、お客様の施術ができるようです。

「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格を取得するには、専門の養成機関に3年間通って国家試験に合格する必要があります。

国家資格を取得したうえで、さらに勉強会に参加したり、同業者同士で練習したり、本を読んだりして研鑽を積んで患者さんの施術を行っています。

以上のような話をAさんにお伝えしたところ、

「やはり人の体に触れるのに、2週間程度で施術ができるのはおかしいですよね」

とおっしゃっていました。

 

 

そこで、以下のテーマについて二回に分けて書いていきます。

①無資格施術について
②あん摩マッサージ指圧師の資格について

今回は「①無資格施術」についてです。

※ ここでいう無資格とはあん摩マッサージ指圧の資格がないことを指しています。
 マッサージを業とできる国家資格は「あん摩マッサージ指圧師」、「医師」のみです。

近年、無資格者の施術による健康被害が増加しています。

◆消費者庁のサイト

法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に
https://ksmk.jp/uploads/579977d086d7bfefcbdf718fc7893aea965f9393.pdf

◆厚生労働省のサイト

無資格者によるあん摩マッサージ指圧業等の防止について
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/061115-1.html

あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師と無資格者との判別について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118517.html


今回の無資格問題ですが、他の業種ではどうなのかを考えてみたいと思います。


例えば調理師。

調理師資格がなくても料理を作ることはできますし、それを家族や友人に提供することもできます。

では、仕事で料理を作る場合はどうか。

きちんとお金をいただいて行う以上、食材の管理や調理場の衛生管理なども欠かせません。

どの食材をどう保存すればよりおいしくなるのか、食中毒を起こさないために保存期間はどのくらいなのかなどの知識が必要です。

調理師免許がなくても、食品衛生責任者の資格を取れば飲食店は開業できますが、ホテルや給食センター、介護施設などでは、調理師資格が必須となっているところが多いようです。

万が一、食中毒などを起こしたら大変な問題になるからです。

参考サイト:株式会社BMLフード・サイエンス 
堂などの厨房を有する飲食業における衛生管理の基礎知識
https://www.bfss.co.jp/media/column/a18

 

 


例えば理容師(美容師)。

理容師資格がなくても、自分の子供の髪を切ったことがある人は多いと思います。

では、資格がなくてそれを仕事にできるか。

理容師法で「理容師の免許を持たないものは理容を業として行うことはできない」と定められているので、仕事でして行うことはできません。(違反すると逮捕されます)

ハサミや剃刀を扱う以上、資格をとるのは当然です。

街の床屋さんで「理容師の資格を持ってないけどやっています」なんて人はいないと思います。

参考サイト:TipsNote 
美容業の開業にはどんな資格・許可が必要?
https://tips-note.com/startup-2020-08-21/

 


例えばクリーニング師。

クリーニング師の資格がなくても、きれいに洗濯してアイロンをかけることはできると思います。

しかし、クリーニング店を開業するためには、クリーニング師を一人以上置くことが法律で義務付けられています。

また、クリーニング業者は、クリーニング業法、 水質汚濁防止法や建築基準法、消防法など業務に関わる法令等のみならず、企業を取り巻く多数の法令や企業倫理を守り、健全な事業活動をすることが求められているそうです。(以下のサイトから引用)

参考サイト:KYOWA CLEANING
国家資格であるクリーニング師とは
https://down-cleaning.jp/news/cleaningmaster/

 


例えば保育士。

保育士の資格がなくても、子どもを育てたことがある人なら、子どもを預かって面倒を見ることはできると思います。

では、なぜ保育士は国家試験なのか。

「保育士は小さな命を預かる大事な職業として、子どもたちを安全に遊ばせ、保護者が安心して子どもを任せられる環境づくりに務めています。それゆえに、保育士は責任ある職業として国家試験を行い、十分な知識を身に付けていることを証明することが必要なのです」(以下のサイトから引用)

参考サイト:たのまな
保育士は何故国家試験なのか
https://www.tanomana.com/smp/freepage_detail.php?cid=0&fid=205#:~:text=%E4%BF%9D%E8%82%B2%E5%A3%AB%E3%81%AF%E5%B0%8F%E3%81%95%E3%81%AA%E5%91%BD,%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

保育士も待機児童の増加で無資格問題が取り上げられたことがある業種なので、マッサージと似たような問題があるかもしれません。

 


いくつか他の業種を例に国家資格について書きましたが、あん摩マッサージ指圧師はどうか。

あん摩マッサージ指圧師の資格がなくても、家族や友人が疲れているときに体をもんだり、さすったりしてあげることはできます。

では、資格がなくても仕事にできるか。

家族や友人にちょっとやる分には資格はいらないと思いますが、やはり仕事として行うには事故を起こさないよう知識や技術は必要ですし、あん摩マッサージ指圧を行ってはいけない症状や状態の見極めなども必要です。

そのため、他の業種同様、それを仕事として行う場合には国家資格がある方が望ましいと思うのです。

 

 

さて、今回はマッサージの無資格問題について、他の業種を例にあげながら考えてみました。一見、資格がなくてもできそうですが、仕事として継続して行う場合には、多くの業種で国家資格を必要としています。

施術をする人だけでなく、施術を受ける患者さんにも、仕事としてのマッサージの在り方について考えていただくきっかけになれば幸いです。

 

続きのブログはこちらからご覧下さい。

ブログ:あん摩マッサージ指圧師の資格について
https://nishigahara4-harikyu.com/blog/qualifications-anma-massage-shiatsu-therapists


【この記事を書いた人】

photo 西ヶ原四丁目治療院 院長の佐藤弘樹(さとうこうき)と申します。
はり師・きゅう師・あんまマッサージ指圧師の国家資格を持ち、病気の治療、予防のお手伝いをしています。

たった一人でも、「治療に来てよかった」と満足していただき、 人生を豊かに過ごすお手伝いをすることを理念としております。
お気づきの点や質問等ございましたら,どうぞご遠慮なくお聞かせくださいませ。

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