Touching Presence – 存在に触れる: ありのままの今にいるということ
トミー・トンプソン
私がアレクサンダーテクニークを習っている先生から紹介された書籍です。
本書は「アレクサンダーテクニークとは何か」という説明はほとんどありません。
すでにアレクサンダーテクニークに関する知識があって、さらにそれを高めたい、深めたいと考えている人に対して、著者の実体験を通して得た知見や気付きを提供した内容になっています。
いる(being)、する(doing)、させてあげる(let)といった、本当に微妙な言葉の表現の仕方にも気遣いが見られ、意識や意図など、考えさせられることが多かったです。
一度読んだだけではとてもすべてを理解できるものではないので、繰り返し読みたいと思います。
個人的に特に印象に残った内容を以下に抜粋しました。
・定義を保留することについて
刺激に対する習慣的反応を後押ししないという点は「抑制」というコンセプトと同じだが、「定義を保留する」という考え方の方が、次に何をするという強調がなく、よりフィットするやり方で環境や他者と関わっていくこと目指していて、テクニークというより心的態度を表している。
→抑制というと、「○○をしないで、別のディレクション(意図・思考)を送り出す」というイメージだったが、定義の保留の考え方はもっと柔軟性があるように感じられた。
・教師の役割について
アレクサンダー教師は相手の生徒が吸収できる情報の量と、吸収し終えたタイミングに敏感でいる必要がある。手放すことを生徒に提案するとき、あなたがまだそこにいるか?そこにいてもらっていると感じられない場合、生徒は手放さない。
→ただ自分の考えだけで相手を判断しようとするのではなく、サポートがあるのを感じられる場を保っているという前提があって相手を送り出してあげるという姿勢は、アレクサンダーテクニークはもちろんのこと、他の教える、導くという仕事においても重要な考え方だと思った。
・プライマリーコントロールについて
頭が首に対して特定の関係性にあることで脊椎が制約なく健やかに機能でき、これが生体全体に影響を与え、私たちが重力に応じてどう動くかにも確実に影響が及ぶというプライマリーコントロールの考え方がある。
よく「頭がリードして身体がついてくる」という言い方をするが、それは正確ではなく、リードするのは注意と意図であり、それ以外の自分全部が活動に入るべく調整される。
→これを説明するための文章があるのだが、それが丁寧で分かりやすく、プライマリーコントロールの理解を深めるものになっていた。以下にそれを抜粋。
注目すべきは首はそれ自体で存在する何かではなく、頭とそれ以外をつなぐ連結部で、首は頭のための肢体、頭が動き回るための手段なのだ。
首の任務は頭、すなわち当人の注意と意図についていくために必要となる大きな可動域を用意することで、何かを見ようとするたびに毎回全身の向きを変えなくても済むようにすること。
首の筋肉は、頭が動けるようにすると同時に、動いている最中の頭を支えてもいて、首の筋肉と関節には圧倒的多数の感覚機構が備わっていて、それらは頭が今どこにありどう動いているかを身体システムに常時レポートしていること。
これによって、頭・首以外のすべての部位が当人の置かれている状況を把握でき、協調のとれた、サポートとバランスのあるやり方で、当人の注意と意図に沿って活動に入っていけるよう自らを整えられるようになっている。

Touching Presence – 存在に触れる: ありのままの今にいるということ