書斎の鍵(現代書林)
喜多川泰
父が遺した遺産を巡る一人の男の物語なのですが、習慣の大事さ、人と人とのつながり、幸せの意味など、多くのことを示唆している一冊でした。
まず2055年という設定がおもしろかったです。
現代でも電子書籍が広まってきて紙の本が徐々に減っていく中、重さや手触り、空白の意味など五感から情報を受けとるのが紙の本のよさで、書斎を作って心のお風呂に入るには紙の本が必要だということは本好きの私にはなんとなく分かりました。
私利私欲のためでなく、誰かを幸せにするために自分を磨く。
その自分磨きのため、感性を豊かにするために読書は重要であるという考え方はもっともだと思います。
また、言葉が思考をつくるから、使える言葉が少ないと、言葉、音、味わい、色、匂いなど、五感で感じる情報に対しても脳は適切な反応ができない。言葉の数だけ人生に深みと味わいが増すという内容は大いに共感できました。
本書に出てくる「心の習慣」の話が印象に残りました。
「人生は才能によって決まっているわけではない。素晴らしい人生を保証してくれるのは、才能ではなく習慣だ。習慣によってつくり出すべきものは思考で、人間の思考には習慣性がある。自分に自信がないものは、いつも自信がない方向に物事を考えてしまう。だから、よりよい人生を送るためには心を強く、明るく、美しくするための習慣を身につける必要がある」
心を強く、明るく、美しくするため、紙の本での読書という習慣を続けようと思います。

書斎の鍵 (父が遺した「人生の奇跡」)