先日、
「医療職が身につけたい 人の心を動かす技術」
という講座を受講しましたので、今回はその話を紹介いたします。
講師は、慶応義塾大学医学部の武藤義和先生です。
本講座ではまず「行動経済学」についての話がありました。
人は常に合理的に判断するわけではなく、直感や思い込み、習慣に左右されて意思決定を行うもので、こうした人間の行動の偏りを分析するのが「行動経済学」だそうです。
これは医療や金融、政策など様々な分野で使われており、今回は医療現場での事例を中心に話をされていました。
行動経済学の理論で、不確実な状況下で人がどのように選択や判断などの意思決定を行うかを説明するプロスペクト理論という考え方があり、3つのメカニズムがあります。
①損失回避
人は損をしたくないことを重視する。得をすることよりも損をしないことを選ぶ傾向にある。
②感応度逓減(ていげん)
利益や損失の額が大きくなるにつれて、それによって感じる喜びや悲しみの感度が鈍くなり、同じことをやってると慣れてくる。
③参照点依存
人は損得を何かを基準にして判断する。不満の多くは正しさの対立ではなく、当たり前という基準(参照値)のずれ。
また、ヒューリスティックとバイアスという考え方も大切です。
ヒューリスティックは、直感とその場の感情のことで、ほとんどの思考、行動を経験則からの自動運転とすることで脳の負担を減らしていて、思考のショートカットと呼ばれています。
服を着るときに右腕から袖を通そう、歩くときに左足から足を出す、などいちいち考えなくても行動できるのは自動運転になっているからです。
バイアスは、決めつけ、思い込み、先入観のことで、心の癖や偏りを表しています。
バイアスには現状維持バイアス(やめたら悪いことが起こるかも)、確証バイアス(統計的に不十分な経験でも真実だと錯覚してしまう)などがあります。
これらは、合理性ではなく自分の中の一貫性を優先していて、やらないのはその人の怠慢ではなく、脳の構造によるものだと武藤先生はおっしゃっていました。
・人は納得しないと動かないので、人を動かすには構造を変えるべきである
・正しい知識を教えるだけでは行動は変わらず、行動は環境に強く依存する
よって、人の感情を動かすのではなく、環境をデザインする対応が必要だという話でした。
環境をデザインする方法として、人間の性質を逆手にとる3つの方法が紹介されました。
①ナッジ効果
肘で軽く小突くような感じで、進んでほしい方向に進むよう誘導するやり方
(男子トイレの小便器のハエの絵、列に並ぶときの床の足跡など)
②デフォルト効果
選択をさせずに最初から決めておいたり、これをしないと進めない状態にしておくやり方
(お店のランチメニュー、指紋認証しないとパソコンが起動できないなど)
③社会的証明
少数派は不安のため、多くの人が支持しているものが正しいと判断すること
(お店の口コミやランキング、赤信号みんなで渡れば怖くないなど)
いずれも、「そういうものだ」という環境をデザインしています。
人は無意識と環境によって行動を決めているので、やらざるを得ない環境にすることで人々の自発的な行動変容を促すことが目的です。
今回の講座で聴いた話は、どれも理屈としては何となく知っていましたが、行動経済学として様々な理論や統計データがあることは知りませんでした。
誰かに何かをやってもらいたいとき、ルールを守ってほしいときなど、行動経済学の考え方は大いに役立つと思いました。
ただ、自分自身も行動経済学のルールに押し込まれているケースもあると思うので、安易に流されないよう注意したいです。





西ヶ原四丁目治療院 院長の佐藤弘樹(さとうこうき)と申します。