銀の猫 (文春文庫)
朝井 まかて
江戸時代の介抱人、今でいう介護の仕事に奮闘する女性お咲の日常を描いた物語です。
江戸時代は、短命と言いながらも、江戸では70代、80代まで生きる人も多かったらしく、家を継ぐ長男が親の介抱に当たるというのが当然という時代だったそうです。
それでも様々な事情があってどうしても長男や家族だけで見ることができない場合に介抱人に依頼します。
身体を拭いたり着替えや薬を飲むのを手伝ったり、下の世話をしたりと、行っていることは今の介護と同じです。
ただ、本書で描かれている介抱人は、3日泊りで介抱して1日休みという相当にハードな仕事で、その分、女中奉公よりも稼ぎが良いというものでした。
自分たちの目の届く範囲でほどほどに楽しんで、たまには孫の面倒を見ながら穏やかに機嫌よく過ごしてくれたら言うことはない。
これは現代においても誰もが皆、老いた親に対して抱く願いだと思いますが、江戸時代ならではの話やその難しさ、それぞれの思惑が入り混じって読み応えがありました。
銀の猫 (文春文庫)