知的戦闘力を高める 独学の技法
山口周 (著)
昔は限られた人間が教会の図書館に収蔵されている書籍から「知識」を得ていたのが、今は誰でも情報にアクセスできる時代です。
そんな時代にどう学んでいくのか、独学のヒントが詰まった一冊でした。
ところどころに引用されている著名人の言葉が的を得ているとともに、これだけ多くの言葉を引用できる著者のストックもものすごいと思いました。
多くの本では、キャリアプランや目的に沿って逆算して学ぶことを推奨している中、本書ではスタンフォード大学の教育学・心理学教授のジョン・クランボルツの調査結果を引用し、キャリアの8割は本人も予想しなかった偶発的な出来事によって形成されていることを説明していました。
キャリアの目標を明確化して興味の対象を限定してしまうことによる弊害が述べられていてとても勉強になりました。
また、自分にとって共感できる、賛成できるという心地よいインプットばかり積み重ねると、同質性の高い意見や論考ばかりに触れて偏った考え方になってしまうということも理解できました。
同質性の高い人たちが集まると意思決定のクオリティが著しく低下する研究も紹介されており、自分が反感や嫌悪感をも意見も大事であることがよく分かります。
これはSNSで同じような意見のユーザをフォローしたり、同じ意見ばかり見聞きするエコーチェンバー現象とも同じ考えだと思います。
本書の終盤には、歴史、経済学、哲学、経営学、心理学、音楽、脳科学、文学、詩、宗教、自然科学のそれぞれの分野で著者がおすすめする本が紹介されていました。
他にも参考になった内容を以下に抜粋。
・信じて丸呑みするためにも読むな。話題や議題を見つけるためにも読むな。しかし、熟考し熟慮するために読むがよい
・「問い」がないところに「学び」はない。極論すれば、私たちは新しい「問い」を作るためにこそ独学しいているわけで、独学の目的は新しい「知」を得るよりも、新しい「問い」を得るためだといってもいいほどである

知的戦闘力を高める 独学の技法 (日経ビジネス人文庫)