村上智彦 著「医療にたかるな(新潮社)」からのご紹介です。
本書の中で描かれている「リスクと向き合う」という話が印象的でした。
医療機関や介護施設において、どんなに口腔ケアや嚥下トレーニングを行っても、病気や誤嚥のリスクを0にはできない
安全=事故がないこととするなら、入所者をベッドで縛り付けるか、薬で眠らせておくのが確実で、栄養も管から与えるのが誤嚥がなくてよいことになってしまう。
そうではなく、高齢者がなるべく普段通りの生活を送れるようなケアを心がけていくべきだ。
もちろん高齢者の行動にはリスクを伴うから、自宅で面倒を見ることになったら身内も不安を感じる。
医療関係者が全力でサポートしても、どこで、誰がケアをしようが、ある程度の確率で事故は起きてしまう。
「プロのサポートがあった上で、何かが起こっても仕方がない」と考える。
事故が起こることを恐れてリスクを回避する選択ばかりしていると、残り少ない大切な時間をつまらないものにしてしまう。
ここまでが本書の抜粋ですが、この考え方は在宅医療が増えていく今後の日本社会において、非常に重要だと思いました。
患者さんが自宅で最期を迎えたいと思っていても、家族は死に向き合うことや、いざという時に助けられなかったらどうしようという思いにとらわれます。
また、患者も家族の負担を考えて病院や施設に行こうとします。
誰がみたってリスクを0にできないのなら、患者さんの残り少ない時間を大切にしてあげたい。
そんな考え方が広がっていって、医師、看護師、介護従事者や家族など、在宅医療に関わる全ての人に対して寛容な社会になればいいなと思います。
医療にたかるな(新潮新書)