はり・きゅうはなぜ効くのか、疑問に思っている方も多いと思います。
元々、はり・きゅうは経験医学と言われており、病気を抱えた患者さんに対して、どこに何をどうしたら治ったということが、四千年以上前から蓄積されています。
最近では、それを科学的に解明する研究も進められており、一部の理論は証明されていますが、まだ未解明となっている部分も多く存在しています。
ここでは、科学的に解明されている事項に対して、私なりの解説を交えて説明していきます。
①自律神経の調整
循環、呼吸、体温、生殖など通常意識することがない機能を調整しているのが自律神経です。自律神経には、主に活動時に働く交感神経と、休息時に働く副交感神経があります。
これらの自律神経の作用により、からだの状態が安定するようになっています。はり・きゅうで皮膚に刺激を与えることにより、自律神経、特に副交感神経の働きを亢進することにより、からだを安定させようとする力を高める働きをすると考えられています。
②血流の調整
体内には血液が流れており、脳や内臓、筋肉などの器官へ栄養を送ると同時に不要な物質を除去しています。
筋が緊張して硬くなると、血流が滞ります。硬くなった筋へはりで刺激を与えることにより、筋の過緊張を緩和し血液循環を改善すると考えられています。
③鎮痛物質の分泌
はり・きゅうによる皮膚への刺激により、活動電位(神経細胞の興奮)が発生し、それが中枢にある脳に働きます。
その結果、下垂体から鎮痛発言物質であるβ-エンドルフィンが分泌され、痛覚を遮断すると考えられています。
④免疫作用の活性化
人のからだは、損傷すると自動的に組織を修復しようとする免疫作用があります。
きゅうで皮膚に微小な組織損傷を起こすことにより、免疫作用を活性化し、関連する組織の修復を図る働きがあると考えられています。
また、上記以外にも岩手県で自由診療による、はり・きゅう治療を行っている医師の増田進先生が、著書の「森の診療所の終の医療」の中で以下のように述べています。
- 西洋医学の薬や注射の場合、よくなることもあるが、悪くなることもある
- 鍼の場合は、よくなった、あるいは変わらないと言われることはあっても、悪くなったという例がとても少ない
- 鍼は体にやさしいと興味をもつようになり、鍼治療もとり入れるようになっていった
- からだを触っていくと、押してみて痛みを感じるところがいっぱいある。
その場所は人によって違う。ツボと言われるところは骨に筋がつく場所にあることが多い。そこに圧痛があり、はりを刺すと筋がほぐれて柔らかくなり患者さんは楽になったと感じる - 骨との付着部分では、筋は緻密な繊維の束(腱)となっている。
からだ中の腱の位置するところがツボと重なっている - 腱には様々なセンサーがあり、センサーは筋肉の緊張を測る。
例えばそこを刺激すると、痛いとは異なり、苦しい・しびれると感じる。
そのセンサー群をまとめて深部知覚といい、はりで深部知覚を刺激して緊張している筋をほぐす - 深部知覚が刺激されると、中枢からバランスをとるよう指令が出るようにできている
増田進先生はご自身の経験上、鍼治療を行った際に副作用により悪くなることが少ないと述べています。悪くなることが少ないというのは治療を行ううえで、大きなメリットになると思います。