褥瘡(じょくそう)に関して勉強になった書籍がありましたので、紹介いたします。
『医療は「生活」に出会えるか』 竹内孝仁 著
褥瘡は主に寝たきりの患者さんに対して、骨の突出部などを長時間圧迫することによってできるものです。
ふだん体重などを支えることのない仙骨部、かかとの後上方、腓骨頭などが好発部位となります。
つまり、「通常では体重のかからない部位を長時間圧迫する」ことによってできます。
あらためて人体を眺めてみると、長時間の圧迫に耐える場所があります。
足の裏、殿部から大腿後面にかけての部位などがそうです。
長い時間立っていたり、座り続けても褥瘡をつくることはないのです。
褥瘡予防というと、基本的に「体位変換」が原則となっていますが、それは昏睡状態や不安定な全身状態にある急性期の患者さんに対する方法であったそうです。
それが慢性期の寝たきり患者さんたちにも同じ方法がとられていることが問題であると著者は述べています。
その結果、体位変換をやめて、「座る」という平凡なことが褥瘡を予防する優れた方法になると気付きました。
長いこと寝たきりの患者さんの場合、起立性低血圧を起こしたり、首や体幹の筋肉が弱くなっているため、座位の姿勢を長くとることは難しいかもしれませんが、少しずつでも続けていくことで、褥瘡が減少していったそうです。
私たちは、普段何気なく座ったり、立ったり、歩いたりしていますが、当たり前すぎてそれ自体が健康を保つ重要な働きをしていることを忘れがちです。
褥瘡という病気を治す力の源泉が、実は生活の中にあったというのは大きな気付きだと思いました。