オカシナ記念病院(角川書店)
久坂部 羊
現代の医療の問題点を通して、生とは何か、死とは何かを問いかける医療小説です。
久坂部さんはブラックユーモアたっぷりの医療小説が多い印象ですが、本書は近代医療の矛盾を分かりやすく説明したもので、考えさせられる内容でした。
真面目一辺倒の研修医が離島の南沖平島で行われている「ほどよい医療」に驚きながらも、少しずつそれを理解していく過程が楽しめました。
がん検診や認知症対策、禁煙対応がことごとくうまくいかない様子は、いかに離島で暮らす患者さんの意に沿っていないかを示すものだったと思います。
・東京では最良の医療を求めて症状がないが病気を見つけるが、この島では患者が積極的な医療を求めない。
・医学は安心を高めなければならないのに、予防医学を強いて病気の恐怖で患者を怯えさせ、不安ばかり大きくしている。
・治療はした方がいい場合もあるし、しない方がいい場合もある。近代医療は治癒と延命ばかり追い求めて、死にゆく人への配慮が欠けている。
この考えは確かに都会では受け入れがたいと思いますが、こんな病院もあって、患者が自ら選択できるといいなと思いました。
オカシナ記念病院 (角川文庫)