私の治療的面接の世界とスーパーバイズ
増井 武士
精神療法家の増井先生のカウンセリングに関する書籍です。
増井先生の「可能な限り副作用がなく、早期に症状が低下する私なりの経験に基づいた方法」という治療面接の具体例が示されていて、とても勉強になりました。
患者さんがなぜ遠くから面接に来るのかの回答として、
「それはね、何か、先生と一緒にいて、先生の顔を見て、声を聞くだけで何か?ホッとして、何故かいろいろなことがどうでもいいような気持ちになるからですよ」
というのは、精神療法家として最高の褒め言葉だと思います。
鍼灸マッサージの施術はカウンセリングや治療面接とは異なりますが、「今日も先生と話し合えて楽しかったし、何となく気分がいい」と言って帰ってもらえるような施術を目指しているので、本書の内容や考え方は私の施術にとても役に立つと考えています。
私が勉強になった言葉を以下に抜粋しました。
・症状という模様
症状という模様が気になる状態のときは、それを打ち消したりしないで、別の好きな模様を作るほうがよい。
その別の模様が段々大きくなるほど、その症状の模様は相対的に小さく感じられるようになる。
・症状能力
患者さんの苦慮することの後に「能力」という文字をつけることは、そのおかげで患者さんが助かっている事実を想定する作業。その内省で患者さんの困っていることをいろんな角度から見ることができる。
・良くなることのイメージの点検
良くなるということは、最悪のときが以前より少しマシになっていくということで、決して落ち込まないということではない。大体、最悪期を100として、30ぐらいで行き来して、最悪時には90のときもあれば50になるときもある。心も身体と同じように自然の一部だから、毎日快晴なんてあり得ない。
・治療的関係
治療者は自分のことをあまり話してはいけないという何となくの決まりがあるが、患者さんに自分のことを聞かれたら素直に話すことと、どちらが大切か。どちらの方が患者さんの回復に役立つか、治療的関係ができるのか、その事実を見て決めることが大切。
・置いておく技法
気になる問題を箱に入れたり、ゴミ箱に入れて蓋をしたり、イメージで包み込んだりする技法がある。
問題や悩みに対して、「なぜ苦しいのか?」ではなく、「どんなふうに苦しいの?」という問いを置いて、心に寄り添うやり方もある。とにかく原因を見つけて除去すれば問題は解決と考えがちだが、「なぜ」と問うて原因を探す思考自体が心の問題にそぐわない。悩みに入り込まないことも大切。
・面接は一度きり、この回でおしまい、という気持ちでやる
面接が終わったとき、「なんとなくいい感じ」で終わっているときはそれでいい。そのために、自分ができること、こうしたら少し楽になれるのではないかということをきちんと伝える。
「カウンセリングは必要なくなってなんぼのもん」であり、面接が続く・続かないはそれほど重要ではない。面接が一度きりのものとして何を伝えるかを真剣に考えなくてはいけない。
・心にはさまざまな位置がある
心の最底辺に身体があって、その身体と重複するように非言語的な身体感覚のようなものがカオスな状態で位置していて、その上に、歩き方、動作、顔色、話し方や雰囲気といった少し具体化されやすい非言語的レベルがある。そして、もう少し上のレベルに、音声やテンポがあって、その上にイメージや直感という感じ方があり、さらに気持ちや気分、その上に言葉がきて、最も上には思想や論理や理念や考えがある。
来談者がよくなっていく順は、おおむねこの低いレベルから変化していく原則めいたものがある。

私の治療的面接の世界とスーパーバイズ: 新人間学として





西ヶ原四丁目治療院 院長の佐藤弘樹(さとうこうき)と申します。