診察日記で綴る あたしの外来診療(丸善出版)
國松 淳和
「治してあげられないかもしれませんが、何回でも診ます。
それでもよければどなたでも、どうぞ」
そんな木製のプレートがかけられた薄暗い路地裏の雑居ビルにある診療所での、一人の女医と患者さんとの一幕を日記形式で描いた読み物です。
患者さんとのやり取りと、そのやり取りを振り返ったまとめ、という形で11種類の臨床ケースが紹介されていました。
採血したり、同じ薬で様子を見たり、薬を増減したりと、初回以外はそれほど時間をかけるわけでもなく、ありきたりな診療の様子が描かれています。
著者自身も書いていますが、
「あまりパッとしないけど、実際の診療ってこんなもんだよね。何しに来てるんだろうかって思うような内容だよね。」
というものが多かったです。
診療というと、毎回何かしら進展があったり、いろいろな検査をしたりと想像していましたが、実際はそうではなくて、ゆるやかに・ゆっくり地味なことを続けていくことなのだと思います。
私は鍼灸マッサージ師ですが、臨床においてはちょっと近いところがあるように感じました。
また、診療には終結があって治って終わりというのが理想なのだとしても、本書で描かれているような「特別あるいは現実的」というケースが多く、実はそれがリアルであるというのは的を得ていると思いました。
すごく良くするとその反動がきてしまうから、患者さんに協力してもらいながら、ちょっといまいちな状態と折り合いをつけていくことだ大事という言葉は現実的で共感できるものでした。
本書の女医さんはそっけないようでいて、案外親身になったり、忙しいからと同じ処方を繰り返したり、あえて聞きたいことを聞かなかったりと、色々工夫しながら診療をしていて、人として好感がもてました。
病院での診療に興味がある方、医師がどんなことを考えているか知りたい方ににおすすめです。
診察日記で綴る あたしの外来診療