むんてら―医者と患者(創元社)
間中喜雄
今から50年以上も前に出版された本なのですが、今読んでも医療の問題点の本質を突いており、勉強になることが多かったです。
現在では医者もサービス業という意識が強いですが、当時は医者の権威が強くて訴えが多い患者を粗末に扱うことも多かったようです。
そんな中でどんな医療が行われていたのか、著者の実際の経験を元に描かれていたため、説得力がありました。
診察結果を整理して説明する、診察時間を予約制にして待たせない、患者の述べることは馬鹿にせずに聞いてやる、患者の病気ばかりではなく社会的条件も調べて発育史を理解する、といった間中先生が本書べ述べている医療は現在まさに実現しているものばかりです。
医者が患者に伝えた病名や説明がもとで、患者に心因性疾患を引き起こす医因性疾患の話も興味深かったです。
医療保険の経緯や運営についても語られていて、安く治すことに重きをおいた医療保険制度は、医師の治そうとする意欲や興味を削いだり、保険事務仕事に忙殺され、医学の勉強をする時間がなくなるという説明はさもありなんと思いました。
流行医と名医の条件にあげられている、
①自信ある態度
②健康
③患者の名をよく覚えていること
④当意即妙に加えて「人間をよく知るもの」
という条件は非常に勉強になりました。
むんてら―医者と患者 (1963年) (創元医学新書)