健康という病(幻冬舎)
五木寛之
さしあたり健康な日々を送っているにも関わらず、どこか病んでいるのではないかと不安に思って健康記事を読みあさり、必要のない検査を受け、サプリメントを常用する。
そんな「健康」という病に冒された現在の日本において、いかに自分と向き合うかを述べた良書でした。
健康はかつては勤労世代の問題だったのが、退職後の30年、40年を寝たきり老人として過ごさずに生きるための問題に変わってきたという著者の指摘はもっともだと思います。
三食きちんと食べるかどうか、水を1日にたくさん飲むかどうか、睡眠を6時間以上とるかどうか、など正反対の専門家の意見が述べられている医療情報がある中、それをどう判断するのか。
人間を画一的にみるのではなく、一生を動的に受け止め、青少年期、壮年期、初老期、老成期と、それぞれ違う生き方を考える必要があるという著者の意見には共感できました。
また、本書の養生の章では、著者の片頭痛や腰痛の経験を元に自分の身体との対話に関する重要性が述べられていました。
人間は百人百様なのだから、自分の身体が発する信号に意識を傾けてしっかり受け止める。医学的根拠がなくても、自分の経験と直感はなによりも大事にする。
老いをどう受け止め、どう折り合うかが問われた一冊でした。
健康という病 (幻冬舎新書)