村上智彦 著「医療にたかるな(新潮社)」からのご紹介です。
本書の中で描かれている「在宅の驚くべき効果」という話がありました。
病院は生活の場としては最悪。
カーテン1枚で仕切られた狭い空間で、おいしいとはいえない食事が不自然な時間に出て、常に他人に遠慮しながら過ごすから。
治る可能性が低いのにストレスが多い入院生活を長期間強いることは医療的な観点からもマイナス。
「病院という魔法の箱に入れてしまえば、障害も治る」
と勘違いしているような人もいるが、高齢者の場合は障害がきれいに治ることはほとんどない。
高齢者が入院すると、慣れない環境で安静を強いられるので、身体機能がおちてしまったり、認知症が進んでしまったりする。
病気や怪我が治っても筋力や気力が落ちて寝たきりになってしまい、結局自宅に戻れないこともよくある。
生活環境という点では、在宅は病院よりはるかに優れている。
住み慣れた家で家族と過ごすことが、精神的にも肉体的にも患者によい影響を及ぼしていることを実感する。
ここまでが本書の抜粋ですが、これは非常に難しい問題だと思いました。
確かに、著者の言うとおり病院にいても症状は改善せず、さらに身体機能や認知機能が落ちてしまいます。
また、住み慣れた家で過ごすことで、よい影響を及ぼすこともあると思います。
ただ、現状、身体機能や認知機能が落ちた高齢者が、それを維持したり、悪化させないようにする場が不足しているように感じます。
デイサービスに通ってちょっとした運動をしたり、人と話をしたいと思っても、今後高齢化人口が増加すると「通いたくても空きがない」といった状況も出てくると思います。
単に、住み慣れた家で過ごせばよいというだけの話ではないと思うのです。
現在、私は数名の高齢者のご自宅で、訪問マッサージをしています。
基本的に要支援または要介護の認定を受けた方々です。
お一人暮らしの場合には、できるだけ色々なお話をしながら、ご自分でも簡単にできるような自己養生のアドバイスをしています。
ご家族とお住まいの方には、ふくらはぎのむくみを軽減する等、ご家族でも出来るマッサージを教えたりしています。
はり・きゅう・マッサージ師としてできることを、これからも考え続けていきたいと思います。
医療にたかるな(新潮新書)