エピクロスの処方箋
夏川 草介
消化器内科医の雄町(おまち)哲郎による哲学する医療シリーズの第二弾です。
第一弾の「スピノザの診察室」のブログは以下から見られます。
ブログ:スピノザの診察室
https://nishigahara4-harikyu.com/blog/spinoza-consultation-room
第二弾では雄町の亡くなった妹の息子である龍之介に色々なことを諭す場面が多く見られました。
・本当に複雑な物事を理解するには時間が必要で、大切な事柄は、あとからお前の人生に追いついてくる
・知識や思想に飲まれすぎてはいけない。最後にお前を支えてくれるのは書物の言葉ではなく直接経験したことや、実際に出会った人の言葉だ
原田病院の同僚の医師や、友人で元同僚の花垣夫婦など、龍之介を見守ってくれる人がそばにいてくれるのは、とても心強いと思います。
「人が、自分の権利ばかり口にするのは、自分ひとりで生きていけると思っているから。でも人生はそんなに甘いものじゃない。生きていくことの哀しみを知っている人間は、理由などなくても、誰かの力になりたいと思うものです」
という雄町の言葉は、誰もが誰かに支えられて生きていることを実感している言葉だと感じました。
今回は雄町が「死」について探求したいという思いも節々に感じられました。
訪問診療の患者さんにも、どう声をかけるのか正解はない中で、患者さんのことを心から思いやる雄町の対応が好きでした。
特に、難病で意識がなく話もできない洋食屋の光恵さんの訪問を6年間続けて、亡くなる前にご主人にかけた言葉はじーんときました。
「亡くなる瞬間に手を握って別れの声をかけてやるというのは、テレビドラマでよく見かけるシーンですが、本当に大切なことはそういうことではないと思います。亡くなるまでの時間を、つまり生きている間の時間を、どうやって寄り添いながら積み上げていくか。それが一番大事なんだと私は思っているんです。そういう意味で、元之助さんは本当に貴重な時間を積み上げてきた。その日常の中で、自然に旅立っていくのだとすれば、光恵さんはけして寂しくないと思います。こんな言い方が正しいかどうかわかりませんが、元之助さんがいつものようにナポリタンを作っている方が、光恵さんは安心するかもしれません」
また、本書では大学病院の絶対権力者で教授の飛良泉寅彦の医療への熱い想いも語られていました。
一人の医師を育てるのがどれだけ大変なことか、患者さんの命さえ教育材料にしてようやく一人前の医師が育つ、それなのに自分の権利ばかり主張して急患を断ったり入院患者を診ない、業務量が多くて責任も重大な内科と外科の医師が不足している、など医師という職業に対する強い使命感を持っていました。
雄町の「人を救うのは医療ではない」という言葉は今後のテーマになりそうな内容だと思いました。
人を救うのは人である、治らない病気を抱えた人はどこへ行くのか、限られた時間しか残されていない人たちに何もできないのかなど、人との関わりの中で人は救われていくのだと語っていました。
さらなる続編を楽しみに待ちたいです。

エピクロスの処方箋 雄町哲郎シリーズ





西ヶ原四丁目治療院 院長の佐藤弘樹(さとうこうき)と申します。