「アレクサンダーテクニーク ある教師の思索」(幻冬舎)からのご紹介です。
Patrick J.Macdonald 細井史江 訳
アレクサンダーテクニークは、間違ったpostural behaviour(姿勢を伴う行動、振る舞い、習性)に気付き、それを抑制し、よいpostural behaviourに差し替える能力と説明されています。
望ましくないやり方に気付いたら、やめればよい。が、「言うは易く、行うは難し」と言われています。
まず気付くことが難しい。鏡で自分の姿をみても、どれだけ正しく認識できるかは微妙で、実は人は自分の見たいものしか見えていない。
そのやり方が馴染んで習慣化しているので、特に違和感を覚えず、目にうつらない。次に、気付いたとして、それをやめることはさらに難しい。
なぜなら、そのやり方が習慣となったのには、長い時間がかかっており、それなりに「合理的な」理由があって習慣化したのである。
たえとば、歩く、椅子から立つ、座るのような日常的でありふれた動きは、普通、あまり注意を払わず、何気なく行っている。
たとえどんなに不自然な特徴的なやり方をしていたとしても、自分がどのように行っているかを正しく認識しているものは少ない。
それだけに無意識に根ざした習慣なのである。
少なくとも現在行っているそのやり方は、その人にとって馴染んだ、当たり前の日常であり、それを変えることは自分の「常識」を返ることなので、新しいやり方の方がより良い使い方であると頭で理解しても、違和感を覚えたり、間違ったことを行っているような感覚にとらわれたりすることもある。
つまり、姿勢を変えるということは、自分のこれまでの考えや常識を変えることにほかならず、その人自身の意識の深い部分に向き合うことになる。
これは、鍼灸マッサージの治療を行うにあたっても大事なことだと思いました。
まず体を緊張させたり、凝り固まっているということに気付く。
そのあと、それをどう改善していくか、患者さんと一緒に考えていく。
そうやって少しずつ長年の習慣と向き合いながら自分の体のことに向き合っていく。
そんな治療を目指したいと思います。
アレクサンダー・テクニーク ある教師の思索(文庫改訂版)