カラフル
阿部 暁子(著)
病気で車椅子生活となった渡辺六花と、怪我をして陸上を続けることができなくなった荒谷伊澄。
同じ高校に通い同じクラスになった二人が、同級生たちとともに世の中には色々な人間がいることを実感しながら成長していく物語でした。
「障がいは個性」とよくいうけれど、今の六花はこれを個性と言われたくない。自分の足で歩けるようになりたいという気持ちと、なんとか折り合いをつけて生きていこうという気持ちを行ったりきたりしている状況で、個性なんていいものには思えない。けれど、個性という言葉がダメと言っているわけではなくて…
というところが本当に難しいところだと思います。
必ずしも正解があるわけではなく、その人それぞれの気持ちをその都度、尊重して考えるのが大事ということがよく分かる内容になっていました。
誰かの手を借りないと、助けてもらえないと、どうにもできない時があって迷惑をかけてしまうことがある。
本当は誰にも迷惑なんてかけたくないけれど、それを言葉にして伝えるのは勇気がいることだし、話しても理解してもらえないかもしれない。
それでも簡単に「仕方ない」で済ませることをせず、少しずつでも何に困っているのか、どうしたらできるかを考えていくというプロセスには多くの学びがありました。
青嵐強歩という高校の歩きイベントにおいて、六花の参加をめぐるクラスの議論で矢地先生が言った
「差別とは、相手を何とかわかろうとする意志を、手放したときに始まるものなのだと思います。
でも、どうか少しだけでいい、常に目の前にいる人の気持ちを想像してほしい。抱えている痛みを思いやってほしい。どうか、この世界にはそれぞれにまったく違うたくさんの人が生きていることを知ってください。それをいつも頭のかたすみにおいて、出会う人の一人ひとりに敬意を払い、誠実に接せられる人間に、みなさんはなってください」
という言葉に、今の多様性の時代に大切なことが詰まっていると思います。
世界がカラフルであることはいいことだと信じたい。そんな心温まる物語でした。
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