医者の本音

医者の本音(SB新書)
中山祐次郎

 

医者が本音を語りにくい問いかけに対して、可能な限り率直に本音を語った良書でした。

分かりやすい例をあげながら、

・「様子を見ましょう」の裏でどんなことを考えているのか?

・大丈夫です!と言いながらどんなことを考えているのか?

・告知すべきかどうかの判断基準

・口コミの信頼度

などが解説されていて大変勉強になりました。

 

医者

 

 

また、待ち時間についても、病院は営業しなくても患者が集まるところだから、医療以外のサービス向上には目が向かず

「待ち時間を短縮しても、病院の質の向上には結びつかない」

と考えられているからという意見には納得できました。

 

医者がかかりたくない医者4つの条件は、私も治療家として当てはまるものがあるので、自分自身にも言い聞かせたいと思います。

 

・話を聞かない医者、話を遮る医者

・白衣がヨレヨレな医者

・看護師や若手医師に高圧的な医者

・「わからない」と言えない医者

 

患者と医者の大きな溝を埋めることの第一歩となる一冊だと思いました。

 


医者の本音 (SB新書)

病院というヘンテコな場所が教えてくれたコト

病院というヘンテコな場所が教えてくれたコト(いろは出版)
仲本りさ


新人看護師の苦労と葛藤を、実体験を元にした言葉と、分かりやすいイラストで描いた良書でした。

特に、本書のテーマとなっている「患者さんの死」について、著者がどのように乗り越えていったのかの描写が素晴らしかったと思います。

「きよさんが教えてくれたこと 後編」では、とうとうその日を迎えるのですが、最後まで患者さんに寄り添う姿が目に焼きついており、最後は思わず泣けてきました。

 

病院

そのほか、医療従事者として、以下の言葉が印象に残っています。

・患者さんが亡くなるのは怖い。

けど今は、私が受け持ちの日を選んでくれたんだなと思っている。
反対に、自分が担当じゃなかった時は、私には見せたくなかったんだなって。

・医療者はさ、患者さんと、その人を大事に想う人たちを、少しでも幸せにしなくちゃいけないんだ。今日はもう取り戻せない。だからこそ、「腕を磨く」しかない。

・患者さんのことを知ろうとすると、病名や検査結果などの医療情報が大半を占める。

そのため、患者さんの人となりに触れるチャンスはすごく少ない。だからこそ、意識的におしゃべりをして、病気とは関係なく患者さんが今までどんなふうに生きてきたのかを知りたい。それは患者さんのためというだけでなく、私たちが「病気」ではなく「人」と関わっていることを忘れないようにするため。

 

患者さん

 


現役看護師イラストエッセイ 病院というヘンテコな場所が教えてくれたコト。

小児科医は代弁者たれ

産経新聞に掲載されていた日本小児科学会会長の高橋孝雄先生の記事からのご紹介です。

「小児科医は代弁者たれ」という言葉があります。

これは、うまく自分の意思を表現することができない幼い子どもや、若い母親の思いをいろんな場面ですくいあげなさいという意味だそうです。

子どもや母親が何に苦しみ、不安を感じ、どうしてほしいのか。

本人自身が気づいていないことをよく話を聞いて探り出し、くみ取って、分かりやすい言葉に翻訳して本人に返すことが「代弁」であると高橋先生はおっしゃっています。

その例として、思い込んでしまっているケースがあげられていました。

ピアノ、スイミング、英会話など、毎日毎日5つもの習い事をしている子どもが心身に変調をきたしました。

ストレス

母親に

「5つは多すぎますから、まずはこれをやめさせましょう」

と伝えると、

「なぜ?全部本人がやりたいと言って始めたことなんですよ」と言われたそうです。

 

子どもの方もそう思い込み、刷り込まれてしまっている。

言葉で言えないから体が悲鳴を上げて伝えようとしたケースです。

また、昔と比べて子どもの数が減った分、親の「かまい過ぎ」を指摘する声もあるそうです。

この子は絶対に成功しなくちゃいけないと追い込まれて、お受験させていい学校に入れて、いい会社に入らせるという、成果物を求めすぎてしまう問題もあります。

特に母親の責任は重いと本人も感じてしまい、周りに責められてプレッシャーを感じてうつ状態になる。そんなケースも増えているようです。

高橋先生は
「長い目で見ましょう。結果なんてすぐには出ません。ヨソの子と比べても意味はありませんから」
と伝えているそうです。

ストレス社会の一端が、母親と子どもの関係からも見られる記事でした。

京都の訪問診療所 おせっかい日誌

京都の訪問診療所 おせっかい日誌(幻冬舎)
渡辺西賀茂診療所

 

国が目指す地域包括システムの完成形がそこに展開されていると呼ぶにふさわしい、「おせっかい」を基本とした在宅医療の内容は感銘をうけるものでした。

また、医師と患者という1対1の関係だけでなく、看護師やケアマネージャ、理学療法士、ヘルパー、事務スタッフなどの医療従事者や、患者の家族の意見を紹介していたのもよかったです。

多くの人間の視点から、今どんな想いでいるのか、患者や家族とどう向き合っているのか、が描かれていて実態を知ることができました。

患者の最後の望みを叶えたり、

住み慣れた家で最後を過ごすための工夫をしたり

といった取り組みも素晴らしかったと思います。

 

治癒力

 

以下に印象に残った内容を抜粋しました。

・病気の治療をすることは、病巣や苦痛を取り除くだけでなく、患者の暮らしをサポートしていくもので、病気の治療が最終目的ではなく、「生活の継続」が目的であるべき。

・在宅医療は医師と患者の関係だけでなく、医師と患者の家族との関係、医師以外の医療スタッフ、介護スタッフとの関係、死を見据えての治療、緩和医療の方針の共有などがあり、単に治療という言葉では括りきれない。

・おせっかいとは、私がやらなくてはならない仕事と、あなたがやらなくてはならない仕事の隙間に、ぽつりと置かれた用事や用件である。これは誰の仕事でもないから、やらなくても責任を問われることはない。

その用事の当事者以外、困る人もいない。しかし、その用事や用件を見つけてしまった「おせっかい」な人たちは、手を出さずにはいられないのである。

少なくとも困っている人がいる事柄なら、支援の手を差し伸べたくなってしまう。そうしたおせっかいが当たり前のように行われる社会であってほしい。

 

私もはり・きゅう・マッサージ師として、地域の病院のリハビリ室に勤務していますが、大勢の患者がいて一人ひとりに多くの時間をかけられず、流れ作業に身を委ねているような気になるというジレンマがあります。

今後、開業して一人ひとりに密着した治療をやっていくつもりですが、一人ではできることに限りがあります。

いかに地域に貢献していくか、治療だけでなく生活の継続のための家族との関係や、介護のサポートなど、今後の検討課題になりました。

 


京都の訪問診療所 おせっかい日誌

その痛み、手術しなくても治ります!

その痛み、手術しなくても治ります!(現代書林)
清水泰雄

 

整形外科医が実践する、テーピングによって筋肉をゆるめることに着目した書籍です。

痛みの原因は椎間板や脊柱管が狭くなって神経を圧迫しているのではなく、トリガーポイントと呼ばれる筋組織の索上硬結であるという考え方は金沢の加茂先生と同じ考え方でした。

トリガーポイント注射という治療法も加茂先生と同じですが、本書で私が注目したのは、トリガーポイントテーピングというキネシオテーピング理論を元に著者が考案したやり方です。

 

テーピング

 

通常のテーピングは痛みのある部位を固定しますが、これはテープを貼った部分の皮膚を持ち上げて皮膚の下の組織全体をゆるめるというものです。

筋肉を伸展させた状態でテープを貼ることで皮膚の下の筋膜がゆるんで、血液やリンパ液の流れが促進されると同時に、発痛物質が押し流されるという説明は納得できました。

しかも、これはやり方が分かれば患者さんが自宅でもできるので、簡易的な予防効果もあって有用だと思いました。

 


その痛み、手術しなくても治ります! 椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・変形性膝関節症・坐骨神経痛