19番目のカルテ 徳重晃の問診【10】(ゼノンコミックス)
富士屋カツヒト 、 川下剛史
なんでも治せるお医者さんを目指して奮闘する医師の物語の第十巻です。
第十巻では、
・病気は医者が必ず治せるという過度な期待をもつ腰痛患者
・リハビリに行かなくなりパーキンソン病が悪化してきた高齢女性
・胃がんが告知され余命宣告された29歳の女性
の話が掲載されていました。
今回は「病気は医者が必ず治せるという過度な期待をもつ腰痛患者」が印象に残りました。
これは、なかなか治らない腰痛患者さんの話です。
他の病院で椎間板ヘルニアと診断されますが、痛み止めでは痛みが改善せず、大きい病院なら治ると思って総合診療医のいる魚虎病院を受診します。
総合診療医の滝野先生が診察している間も、他の病院に対する文句が止まりません。
「痛み止めとリハビリで様子を見ましょう」と冷たくあしらわれたと言い、悪い口コミをネットに書き込む患者さんのようです。
デスクワークなのに、腰が痛くて長く座っていられないのでなんとかしてくれ!と強く訴えます。
痛みで神経が過敏になり、筋肉が緊張して血行不良になってそれが痛みになっていくという痛みの悪循環が起きていると考え、神経ブロック注射を提案する滝野先生。
注射を打つために麻酔科医の先生を連れてきたら、今度は注射をしないと言い出し、また大変という話でした。
最近は、とにかく早く治してほしいと言ったり、医師の態度が気に入らないとすぐに病院を変えたりする患者さんが多く、医師の先生も本当に大変だと思います。そして患者さんもしっかり話を聴いてもらえずにつらい思いをしています。
当院にはり・きゅう・マッサージを受けにいらっしゃる患者さんの中にも、腰痛で病院に行って
・レントゲンをとっても異常がなく、湿布と痛み止めを処方されただけだった
・痛み止めを飲んでとにかく安静にしているように言われたが、よくならない
とおっしゃる患者さんが来院されることも多いです。
そのときに私は2つのことを意識しています。
・できるだけ病院の悪口を言わない
→病院の医師の大変さも分かるので、患者さんに共感しながらもできるだけ悪いことは言わないようにしています。近年は病院を利用される患者さんが多く、一人ひとりに時間をとって話を聴くことが難しいのかもしれません。
・患者さんのつらい思いをきちんと聴く
→慢性の痛みになると、簡単には解決できません。腰痛が出ている原因も様々で長時間のデスクワークや運転、育児、介護など、色々なケースが考えられます。
そのため、まずはしっかり患者さんの話を聴く、そして今できていることを認めつつ、できそうなことを提案していく。そんな考え方で患者さんに向き合っています。
はり・きゅう・マッサージの仕事は、忙しくて一人ひとりしっかり話を聴くことができない医師と、つらい思いを聴いてもらえない患者さんの間に入って、うまく調整できる立ち位置にいるのかなと考えています。病院で痛み止めの薬を処方してもらいながら、はり・きゅう・マッサージを受けている患者さんも多くいらっしゃいます。
もちろん患者さんの状態によって、はり・きゅう・マッサージではなく病院でしっかり診てもらうべき症状だと思った場合には、その旨を患者さんに説明して病院の受診をすすめます。
さて、19番目のカルテ第十巻の前述の「病気は医者が必ず治せるという過度な期待をもつ腰痛患者」はその後どうなったか。
どうやら神経ブロック注射を受けて腰痛が落ち着いたようです。(1回でよくなったのか、複数回受けたのかは分かりませんでしたが)
本書では、治療以外のセルフケアや日常生活で気を付けることの話は出ていませんでした。
私なら、はり・きゅう・マッサージ以外にも
・デスクワークが長いということなので、座り方の確認やクッションを使う提案
・日頃の運動習慣や歩く頻度の確認
・仕事の合間にできる簡単なストレッチの紹介
なども行って、少しでも患者さんの腰痛が楽になるような働きかけをしていきます。
19番目のカルテ 徳重晃の問診 10巻【特典イラスト付き】 (ゼノンコミックス)